昨今、IT業界で大きな注目を集めている言葉のひとつに「ノーコード」があります。(NoCode)という綴りから、コードがいらないということは想像できますね。
しかし、まだ登場して間もない言葉のため、詳しくは知らないという人も多いのではないでしょうか。
ノーコードとは何か、なぜ今注目されているのか、どんなメリットがあるのかなどをまとめました。
目次
ノーコードとは

通常、Webサービスやアプリを開発するにはプログラミング言語を駆使して、ソースコードを記述しなければなりません。
ノーコードはその名前の通り、ソースコードを記述しなくても開発ができるサービスのことです。
GUI(Graphical User Interface)、画面操作によって完成されているパーツやテンプレートを組み合わせることで、複雑で専門的な作業の省略を可能にしています。
なぜノーコードが注目されるのか

実はノーコードは真新しい技術ではありません。古くからある技術を組み合わせて作られていて、革新的と言えるほどのものではないのです。
源流は1979年にまで遡るとさえ言われています。インターネットの登場以前から、プログラミング言語を使わずに開発を行えないかという試行錯誤が繰り返されてきました。
しかし、ノーコードという言葉が盛んに取り上げられるようになったのは、2020年頃からです。
何故、にわかに注目されるようになったのか。それにはいくつかの理由があります。
IT人材の不足
世の中にITが浸透してから久しく、現在では大半のビジネスにとって必須のものとなっています。そうした状況の中、深刻なのがIT人材の不足です。
経産省によると、2030年には最大で79万人不足する見込みだそうです。現在でさえIT人材の数はビジネスのニーズに追いついていません。
初心者を1から教育するには大変なコストと時間がかかります。
ノーコードは、その問題の解決策として期待されているのです。ある程度のIT知識さえあれば使えるので、スペシャリストがいなくても内製が可能になります。
業務やサービスのオンライン化
インターネット上にサーバーやデータを配置し、ブラウザで閲覧する仕組みをクラウドといいます。高価なソフトウェアが不要で、従量課金やサブスクリプションによって成り立っているサービスが、ノーコードサービス発展の転機となりました。
クラウドサービスが登場して10年強。かつてはセキュリティを不安視されていましたが、多くのエンジニアや企業の努力によって、その問題がクリアされました。ノーコードが受け入れられる土台ができたのです。
またオンラインで、業務同士の連携が求められることも増えています。かつては双方のサービスがプログラムで構築されている必要がありましたが、ノーコードならプログラム・ノンプログラムを選びません。
ビジネスの多様化・複雑化
インターネットを介し、さまざまな情報が飛び交う現代。ニーズは多様化、複雑化の一途をたどり、ビジネスもそれに追随しています。
常に新たな試みに取り組んでいくことに迫られています。1つの企画に巨大な資金を投入するのが難しくなりました。
いくつもの小さな投資から始めて、育てていかなくてはならないのです。開発費が少なく済むノーコードはこうした潮流に適しています。小回りがきくため、小さな市場への参入も可能です。
ノーコードのメリット

その特性が時代に受け入れられたノーコード。具体的なメリットを解説します。
開発知識が不要
前述の通り、専門的な知識がなくても開発ができるというのが非常に大きなポイントです。ドラッグ&ドロップなど簡単な操作で行えるのでイメージを容易に形にできます。
エンジニアに依頼しなくてもいいので、現場でアプリが必要だと判断された場合、すぐに制作に取り掛かれます。
担当者が直接開発に携われるというのも魅力です。担当者と開発者とのコミュニケーションの中で、意図が正しく伝わらないということは往々にしてあります。それぞれの専門分野が違うので認識の齟齬は当然と言えるでしょう。
業務のことを詳しく知らない開発者が制作したため、システムとしては問題ないけれど、現場では使いにくいということも起きてしまいます。ノーコードならば担当者が直接開発に携われるので、こうした問題も回避できます。
短期間・安価で製作可能
ノーコードは簡単で、しかも短期間での製作が可能です。簡素なものであれば、着手後1日でのリリースも不可能ではありません。外注すれば完成まで数カ月を要することもあるので、この差はかなり大きなものです。急な方針転換や修正にも素早く対応できます。
外注の必要がなく、短期間で製作できるということは、費用を安く抑えられるということです。予算が潤沢ではないスタートアップ企業などで重宝されています。
オンラインサービスとの連携
ノーコードが注目される理由として、業務やサービスのオンライン化を挙げました。ノーコードはそれらとの連携もスムーズです。
ノーコードの流行以前から、オンラインサービス同士を連携する仕組みの開発は行われています。しかしそれはソースコードが必要なものでした。ノーコードは、ここでもソースコードを不要にしたのです。
オンライン化はテレワークの浸透によってさらに加速しています。急速な発展は多くの課題を生みますが、その中の1つが契約書です。紙でのやりとり、押印はオンライン化との相性がよくありません。
そこで電子印鑑のオンラインサービスをノーコードで連携させるという試みも始まっています。
オンライン化の流れは今後も続いていくことでしょう。ノーコードもそれに伴い、さまざまな分野に進出していく筈です。
ノーコードのデメリット

非常に便利なノーコードですが、万能ではありません。デメリットもしっかりと把握しておきましょう。
自由度が低い
すでにあるテンプレートやパーツを組み合わせて簡単に開発を行えるのがノーコードのメリットですが、裏を返せばテンプレートやパーツがなければ開発できないということです。
決められたものを組み合わせて開発を行うため、煩雑な案件には対応できません。
そのため、大規模な開発には不向きです。複雑な機能を実装したいのであれば、専門家に依頼するのが安全です。
ノーコードでの開発を行うのであれば、予定している機能が実装可能かどうかはあらかじめ確認するようにしましょう。
サービスへの依存
ノーコードは、基本的にどこかの企業が提供しているサービスです。値上げされればそれに従わなければならないし、サービスが突然終了するという可能性もあります。
また、サービスごとのインターフェイスが異なるので、乗り換えが難しいという点も考慮しなければなりません。
開発に着手するにあたって、サービス選びは慎重に行いましょう。
日本語サポートが充実していない
ノーコードのサービスの多くは、海外の企業が提供しています。説明が英語で記載されているので、使いこなすには語学力が求められることがあります。もちろん問い合わせも英語で行わなければなりません。
国産のサービスや日本語に対応しているサービスも増えてきてはいますが、全体を見れば一部で選択肢は狭められてしまいます。
まとめ

ノーコードはこれから先、さらに浸透していくと見られています。
人材の不足、オンライン化、ビジネスの多様化・複雑化など時代に求められているサービスです。
プログラミングの専門知識がなくても開発を行えるというのは非常に大きなメリットで、さまざまなビジネスに恩恵をもたらすでしょう。
しかし、デメリットも存在するので、どんな場面においても効果的というわけではありません。
特性をしっかりと理解し、上手にノーコードを利用してください。
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